炎上芸人「西野亮廣」。
僕は彼のことは「はねとびで面白かった」くらいしか知らず、その後も時折「炎上」について他の芸人にイジられたりしているのを観て、「なんか色々やりたがってる芸人さんなんだろうな」という認識しか無かった。
でも実は彼は相当な天才で、ホリエモンと肩を並べる「時代の先駆者」だと「革命のファンファーレ」を読んで気付いた。
「革命のファンファーレ」をざっくりと解説
作品名 | 革命のファンファーレ 現代のお金と広告 |
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著者 | 西野亮廣 |
発売日 | 2017/10/4 |
販売サイト | Amazonなど |
「革命のファンファーレ 現代のお金と広告」
副題に「現代のお金と広告」と付いているように、本書は「マーケティング」についてしっかりと書いてある。
内容は基本的に「”えんとつ町のプペル”を売れるようにした仕掛け」であり、それ以外の事についてはほぼ書いてない。
しかしその「えんとつ町のプペル」を通して、西野亮廣がいかに用意周到で計算できる人間なのかを理解出来た。
僕はブログでお金を稼いでいるので、西野亮廣の哲学はいくつか応用できる部分もあったが、「何かを売る」という事に興味の無い人間が本書を読んでもあまり意味を成さないように思う。
「ビジネス書カテゴリーで一番売れてるし、とりあえず買ってみるか」
そういう考えで本書に手を出した人も多いと思うが、「ビジネス書フェチ」というだけで読める内容ではない。
なんなら本書のタイトルは「”えんとつ町のプペル”をヒットさせた方法」の方がたぶん相応しい。
「革命のファンファーレ」は、「何かを売ろうとしてる人限定」に向けた事しか書かれていない
「5000部売れたらヒット」という絵本市場で、西野は「えんとつ町のプペル」という絵本を30万部以上売った。
本作は「なぜ”えんとつ町のプペル”が売れたか」を全て解説している。
とりあえずそのテクニックを一部紹介する。
・ネットで絵本データを無料配布した
→絵本は、母親が書店で立ち読みし一度内容を知ってから買うと知った。だからネタバレさせた
・本当は横長な形の絵本にしたかったけど、あえて正方形にした
→インスタ映えのため
・「えんとつ町のプペル」の原画を一般希望者に渡し、その人たちに展示会を開かせている
→「作品」は、牛乳やお米などの生活必需品と違い売れない。だから展示会を行い、来場者が「お土産」として絵本を買って帰るようにアプローチ。
これらは一例だが、西野は自分の本を売る為に「お金」について考え、勉強し、そして「えんとつ町のプペル」を売る為にいくつものギミックを仕掛けた。
そしてこれらの内容が、芸人らしいユーモア溢れる文章で書かれており、読みながらしっかり興奮できる。
このように「革命のファンファーレ」は「何かを売ろうとしてる人」に対しては胸が熱くなる内容だが、それ以外の人にとっては、ある程度胸が熱くなる内容であれど、あまり実践しにくい事が書かれていると思う。
[itemlink post_id=”4163″]相当賢くないと応用するのは難しい
本書は「プペルの売り方」こそ重厚に書いてあれど、その応用の仕方までは書かれていない。
西野が行ったのは「えんとつ町のプペルをヒットさせる方法」であり、読者が取り扱っているのが「絵本」ならば似たような方法でヒットを狙えるのだろうが、我々は別に絵本を販売しているわけではない。
だから「西野の手腕をどのように応用するか」は読者次第だ。
・インスタグラム
・クラウドファンディング
などのツールの使い方が多少書いてありそれは非常に有益だったが、それ以外の内容は少し薄かった。
だから「具体的にどうやって自分の商品を売るか」については、「西野のテクニックを知ったうえで、再度自分で計画する」というフローが(当然だが)必要になる。
西野のお家芸「炎上」の真意が知れた
最近このブログでプチ炎上が起き、僕はそれきっかけで「革命のファンファーレ」を読んだ。
というのも、人生初めての炎上だった為少し凹み、この現実をどう捉えればいいか分からなかった。
だから「炎上」とかのワードで調べていたのだが、そしたらあるブログにて「革命のファンファーレからの引用文」があり、そこに感銘を受けた。
アンチを手放してはならない
議論ほどコストパフォーマンスの良い宣伝は無いし、こちらはオセロで言うところの角を押さえているので、たくさん取らせるだけ取らせておいて、最後に一つだけ角に石を置けばいい。
感情に任せた下手なツッコミは僕がわざわざ手をくださなくても自然淘汰される。
後ろめたいことを1ミリもしていなければ、反対派のエネルギーほど使えるものは無い。アンチを手放してはいけない。
引用:革命のファンファーレ(P.81)
この文章が正に僕が求めていた答えであり、実際に本書を買って読破しても、最終的に一番感銘を受けたのはやはりこの部分だった。
そんなわけで、西野の「炎上利用方法」は凄まじい。
しかも僕が知る限り、それらの炎上は「わざとやっている」わけではなく、非常にロジカルで有効な手段を「炎上が起きそうだな」という感覚でやり、そのうえで炎上している。
だから西野の行動は一つも無駄がない。
「えんとつ町のプペル」発売1か月後にネットで無料公開した
「有料の絵本をネットで無料公開した」
しかも出版社や事務所には隠した状態でクーデター的にこれを行ったというのだから、当然のようにバッシングを受けた。
同業クリエイターからは「そんなことをされたら俺たちの作品の質まで落ちる!」と言われ、一般客からも「購入した人は可哀そうだな」と言われる。
この炎上ももちろん西野の計算であるが、炎上効果はオマケでしかない。
西野は「無料公開そのものによるメリット」を十分に受け取っていたのだ。
「絵本」というのはそもそもネタバレが無い。
むしろ子供に絵本を買い与える母親は、書店で一度立ち読みをし内容をしっかり理解したうえで購入に至る。
絵本は「読み聞かせ」がゴールであるため、「読み聞かせができない状態での配布(つまり書店での立ち読み)」は何のダメージにもならない。
西野は需要をしっかりと理解し、「無料配布が売り上げUPに繋がる」と確信したからそれを行ったのだ。
さらに「炎上」という無料の宣伝効果まで生み、ノーコストで「プペル」を多くの人に知らせることも出来た。
「お金」や「信用」の話もすごく有益
「お金持ち」ではなく「信用持ち」という事が度々登場する。
お金ではなく「信用」を持っていれば、「クラウドファンディング」を使いいつでも信用をお金に両替できるのだと、西野はそう言っている。
そもそもクラウドファンディングを使用しない層にとってはあまり興味が持てない話かもしれないが、これは西野が「お金」について語るうえで何度も絡んでくる。
また、西野は「お金とは信用を数値化したもの」とも言っているが、恐らくこの辺りの哲学は「クラウドファンディングでの成功」から来ているように思う。
西野は日本で一番クラウドファンディングを上手く活用している人物なので、そんな彼から「お金」の話を聞けたのは凄く有益だった。
生き方を改める良い機会となった
「好きなことをやるしかない時代」
こんな素晴らしいセリフが今までにあっただろうか。
仕事に関する認識は人によって異なるが、「仕事は嫌なもの」という認識はもう古い。
「好きなことをやるしかない時代」というセリフは本書の序盤で登場した言葉だが、この言葉から西野の天才さが分かる。
「世界は今急激に成長している」
「もうロボットが我々の仕事を奪っている」
これらの言葉は、もう10年以上前から使い古されたテンプレのような決まり文句だが、本書でも登場する。
今更我々はこの言葉だけで感動することは無いが、「好きなことをやるしかない時代」という皮肉交じりの超絶前向きメッセージをハメ込むことで、西野は本書の導入部分を一気に盛り上げた。
「AIが人間の仕事を奪っているから将来失業者が増える」と色々言っているが、AIが奪っているのは基本的に人がやりたがらない地味な仕事ばかり。
だったらちゃんと自分の好きなことをやっていかないと生きていけない。
「好きなことで生きていく」
「好きなことでも食べていけるんです!」
それ系の決まり文句が多い中での「好きなことをやるしか生きていく道はない。」というさり気ない強烈な文言。
ここに心打たれた人もきっと多いと思う。
まとめ:「革命のファンファーレ」に出会って本当に良かった
「革命のファンファーレ」には「学校で教わらないこと」がしっかりと書いてあります。
学校の先生とは、社会経験がない人であり、むしろ「お金について一番無知な人」です。
もちろん例外もいるのでしょうが、そういう特例を言いだしたらキリが無いので止めておきましょう。
そして我々はそんな方々から色々教わって大人になったので、お金や「モノの売り方」についてはあまり知りません。
「革命のファンファーレ」は最新のマーケティング手法が書かれているので、恐らく10年後には古くなっているかもしれませんが、それでも間違いなく有益で素晴らしい本です。
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