僕が以前アルバイト入社したデザイン会社には、とても優秀な先輩がいた。
入社後しばらくして知ったことだが、彼は「時給800円で雇われているバイト」だった。
しかも何年間もそこで働き続けている。
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目次
僕が入社しかけたブラック企業
「尊敬しかけた人が何年間もそこで最低賃金で働いている」という事実。
どんな事情があるにせよ、僕はこれで大きなやる気喪失につながった。
まだ入社したばかりの自分と先輩が同じ給料。
これはつまり、「お前の給料も全然アガラナイヨ」と言われているようなものだ。
しかし、低賃金で雇われ続けている彼には何か事情があるかもしれない。
・時間が欲しいからいつでも休めるバイトがいい
・経営者に大きな借りがある
・フリーでもやってて、経理的な問題でバイト雇用となっている
などなど。
しかし、直接本人に聞いてみると決してそうではないことが分かった。
もしかしたら僕が知らない大きな何かがあるかもしれないが、表面だけを見ると彼は「もっと稼いでいい人材」であると思う。
むしろ「先輩が定収入」という事実は、他スタッフのやる気喪失にもつながるため、他者のやる気向上の為にも、何か理由があるのならそれを明確にしておくべきだ。
頭が良い人は自分を納得させるのが上手い
まず彼は「自分の給料に不満は無い」と言っていた。
これが「本心」なのか、「自分にそう言い聞かせているだけ」なのかは分からない。
個人的な想像ではたぶん後者だと思う。
もし仮に「自分に言い聞かせる」タイプの人間だとしても、彼の受け答えを聴く限り「自分が今の会社で働き続けるロジックの組み立て」に隙が無く、彼は本当に望んでブラック企業で働き続けているということが分かる。
どういった受け答えをしたかは分からないが、何を言っても
「僕がこの会社で働く理由」「辞めない理由」
をロジカルに教えてくれた事を覚えている。
彼は就職活動でかなり苦戦したと言っていた。
単純に実務経験が無かったために面接に落ち続け、そしてやっと手にした職。
ここからは僕の勝手な見解だが、彼は「辞めたくない」というよりは、「あの辛い就職活動をまた経験したくない」のでは無いだろうか。
「転職活動をしたくない」という目的のために「今の会社を辞めない」という手段を選び、またその手段の為に「今の会社で働き続ける理由」を隙間なく組み立てているように見えた。
その「今の会社で働き続ける理由」も、詳しい人が見たらデタラメで突っ込みどころの多いものかもしれない。
でも、少なくとも僕は一時的に納得してしまう程の説得力だった。
経営者も、自分の会社をブラックにしたくてしてるわけじゃない
僕は彼を説得しようとした訳では無いが、少なくともその会社の経営者は無能だった。
僕が一番腹が立ったのは、「営業は自分の給料の3倍を稼がないといけない。25万円の給料が欲しいなら、75万円分の仕事を取ってこい!」とデザイナーに対して言うのだ。
この話を聞いた時、低賃金の先輩でさえ「思わず笑いかけた」と言っていた。
僕も笑ったw
僕は面接時に「残業はどの程度か」というのを絶対に確認している。
例のブラック企業でも「自分が残業が嫌いだから、社員にもあまり残業はさせない」と経営者は言っていたので僕は安心した。
しかし実際は、例の低賃金アルバイターに徹夜(しかもサビ残)で仕事をさせるという鬼畜ぶりだ。
しかも「これ今日中によろしくー!」とかめちゃくちゃ簡単に言ってくる。
未だに思い出しても腹が立つが、マジで辞めて良かった。
どうでもいいが、「よろしくー!」の言い方が、語尾強めで「よろしくー!↑」みたいな言い方だったのが余計に腹が立つ。
その一言さえあれば、従業員を使い倒して良いとでも思っていたのだろうか。
しかも給料の支払いミスも非常に多かった。
話を聞くと、どうやらクラブで知り合った元モデルか何かの女性と結婚し、その妻に会社の経理面を任せているとのことだ。
「夫が起業し、妻が仕方なくその会社の経理や事務をする」
という構図はよくある。
しかし、自分の資質(得意分野)に関係なく「状況がそうなった」という事で無理に経理をやらされているような人がいる会社では、僕は働かないと心に決めた。
意図的かどうかに関わらず、正しい給料が振り込まれないというのはやはり気分が悪い。
特にこういう「クラブで知り合った」とか、なんか勢いで起業しちゃった感のある会社はより嫌悪感が増す。
でも、「彼らに悪気が無い」というのは良く分かる。
何も最初から「低賃金で雇い続けてブラック企業として甘い汁吸い続けよ!」
と思ってるわけでは無いだろう。
実際にこのブラック経営者も、善人か悪人かで考えれば善人ではあった。
単純に会社の規模が小さすぎて誰も口をはさめず、そのせいで「経営者だけが思い通りの会社」となってしまっているように思えた。
そうならないように「労働基準法」というのがあるのに。
労働基準法(労基法)がある理由
経営者と社員が納得して働いているのだから、労基法という形で国が介入する必要は無い。
確かにそう思える。
ではなぜ会社の仕組みに対してわざわざ労基法が介入してくるのか?
答えは簡単。
国が介入せず、本当に経営者とスタッフだけで会社を運営させた場合、だんだん「奴隷制度」のようにスタッフ側が損をする仕組みになる事が歴史的に明らかだからだ。
人間というのはどうやらそんなもんらしい。
だから先人たちが労働基準法というのを作ってくれた。
そしてこの労基法。
まず普通に僕たち凡人は熟知していない。
経営者なら当然知っている必要があるが、労基法を知らない経営者も多い。
もし経営者が無能かつ、社員も誰も声を荒げない真面目な人たちばかりの会社の場合、「俺(経営者)の思い通りの会社」となってしまう。
雇われてる側で、労基法を盾に上長にぶつかれる人間がこの日本に何人いるだろうか?
「そもそも自分の能力は本当に給料に見合っているのか?」
と不安を抱きながら働いてる人も多いだろうし、そんな人たちが「労基法」という圧倒的事実を元に上にぶつかるなんて中々できない。
例のブラック会社は、スタッフの人数も1ケタ台と少なく、しかも全員20代だったためブラック化したように思える。
頭が良い人に限ってブラックで働き続ける:まとめ
「頭が良い」という言葉は定義が曖昧なので嫌いだが、当記事では「頭が良い = 理由付けが上手い人」として扱ってきた。
理由付けが上手い人は行動に一貫性があり、人間として尊敬できる部分も非常に多い。
しかしその方向性が、”このままで良い理由探し”になったらだいぶ危険な気がする。
この辺りは、社会経験が薄く、特に立ち向かったりしない僕のようなヘタレが考えることでは無いだろう。
反省
当記事では「ブラック企業」という「自分の背丈に合わない課題」について考えようとしてみたが、やはりまだ未熟である事を痛感した気がした。(書いてて難しかった)
「ブラック」とか「社畜」という永遠のテーマみたいな問題に手を突っ込むには、まだまだレベルが足りない・・・。